「21世紀型スキルって何?分かりやすく教えて」
「国(文部科学省)は、21世紀型スキルについてどう言っているの?」
「21世紀型スキルとか批判的思考とか、新しい言葉が出てきてよく分からない!」
など『21世紀型スキル』について、いくつか感じていることがあるのではないでしょうか?
21世紀型スキルとは、「21世紀を生きていくために必要な新しい能力」のことです。例えば「創造性」や「コミュニケーション能力」などがありますね。21世紀を生きる子どもたちが身に付けたいスキルとして、近年注目を集めています。
このページでは、21世紀型スキルについて以下の内容をお伝えしていきましょう。
このページでわかる21世紀型スキルのこと
- 基本情報(代表的な21世紀型スキル)
- 21世紀型スキルが求められるようになった理由
- 文部科学省での定義
- 関連する用語
- これからの取り組み方
順番に見ていきましょう。
21世紀型スキルとは「21世紀を生きていくために必要な新しい能力」のこと
冒頭でもお伝えしたように、21世紀型スキルとは「21世紀を生きていくために必要な新しい能力」のことです。
従来の教育では、「何を知っているか?」という知識の有無が問われました。現在もまだこの流れが主流ではあります。しかしこれからは、「知識を使って何ができるか?」が問われる時代になっているのですね。
そこで、人の能力や資質を問うのに必要とされているのが、21世紀型スキルなのです。
21世紀型スキルは、アメリカを中心に「ATC21S(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)」と「P21(Partnership for 21st Century Skills)」の2つの団体を通じて知られるようになりました。21世紀型スキルといえば、ATC21S とP21の定義がスタンダードといってもいいでしょう。
では21世紀型スキルとは、具体的にどのようなスキルなのでしょうか?
代表的な21世紀型スキル4つ
代表的な21世紀型スキルとして、国際研究プロジェクトのATC21Sで定義されているスキルを紹介しましょう。
ATC21Sでは、4つのカテゴリーと10個のスキル、さらに「KSAVE(知識:Knowledge、技術:skill、態度:attitude、価値:value、倫理:ethics)」というフレームワークから21世紀型スキルを定義しています。
ATC21Sの定める21世紀型スキル 思考の方法
(Ways of thinking)・創造性、革新性
・批判的思考、問題解決、意思決定
・学び方の学習働く方法
(Ways of working)・コミュニケーション
・協働(チームワーク)働くためのツール
(Tools for working)・情報リテラシー
・ICT(情報通信技術)リテラシー世界の中で生きる方法
(Ways of living in the world)・市民性(ローカル及びグローバル)
・生活と職業
・個人及び社会的責任(文化的認識及びコンピテンシーを含む)
出典:Assessment & Teaching of 21st Century Skills - ATC21S
一方、P21の定める21世紀型スキルでは、「学習スキル・変革スキル(Learning and Innovation Skills)」にある「4C」が有名です。
P21の4C
- Critical thinking(批判的思考)
- Communication(コミュニケーション)
- Collaboration(協働)
- Creativity(創造性)
後ほど解説しますが、21世紀型スキルにある「批判的思考」は、特に子どもの考える力を育むために注目を集めているスキルですね。
では近年になって、なぜ21世紀型スキルが求められるようになってきたのでしょうか?
21世紀型スキルが求められるようになった理由(日本の現状と問題点)
21世紀型スキルが求められるようになった理由について、世界と日本の現状を絡めて解説しましょう。
20世紀でも「知識だけでは人の能力・資質は分からない」と分かっていた
21世紀型スキルの発端は、1970年代のアメリカです。外交官試験を通じ、「試験では、就職後の就業能力がきちんと測れない」と問題視されたのがはじまりでした。
そこから「人の能力、資質を把握するにはどうすればいいか?」が問われ、その流れが21世紀型スキルを生みます。アメリカでは、20世紀の時点ですでに「知識ではなく、何ができるか?」という新しい「人の能力観」が生まれていたのですね。
一方、日本ではどうなっているのでしょうか?
日本のこれまでと現状
日本の現状として、90年代半ば以降から国際競争力が落ちている点があります。
問題点として、「人口減少」「少子高齢化」「若者の内向き志向」、他にも「企業の海外進出によるグローバル化」「諸外国の台頭」などがあります。これらはよく聞く話でしょう。
日本の経済が上り調子でいられたのには、「工業の盛んな時代に、産業構造が日本の教育の形が合っていた」という理由がありました。
しかし今はどうでしょうか?工業社会を経て情報社会となり、「Society 5.0時代」と呼ばれる新しい時代に突入しています。
Society 5.0時代については、GIGAスクール構想の記事を参考になさってください。
時代が変われば教育の形も変わる
さて、時代が変われば教育の形も変わります。そこで知識ではなく、「知識を使って何ができるか?」を問うために、「21世紀型スキルのような定義が必要になってきた」ということなのですね。
こういった転換の象徴として、日本でも2020年度から小学校ではじまったプログラミング教育などがあります。
参照・参考:学校教育の情報化に関する懇談会(第7回) 資料1 これまでの主な意見:文部科学省
文部科学省で定義されている21世紀型スキル
21世紀型スキルが注目を集める中、日本でも文部科学省が所轄する国立教育政策研究所から、2013年に方針が発表されています。
方針では、21世紀型スキルの言葉の代わりに、「21世紀型能力」という言葉が使われています。では21世紀型能力とは、どういった内容なのでしょうか?
国立教育政策研究所の提案する「21世紀型能力」
21世紀型能力とは以下のとおりです。
21世紀型能力 基礎力 ・言語スキル
・数量スキル
・情報スキル思考力 ・問題解決・発見力・創造力
・論理的・批判的思考力
・メタ認知・適応的学習力実践力 ・自律的活動力
・人間関係形成力
・社会参画力・持続可能な未来への責任
具体的には、以下の内容を目指すと述べられています。
- 基礎力:言語や数量、情報リテラシーへの習得を目指す
- 思考力:基礎力を踏まえ、分析や応用、問題解決能力などの習得を目指す
- 実践力:基礎力を基盤に、思考力を実生活で使い、実際の自律的活動力に使うことを目指す
ちなみにこれら3つの力は、学習指導要領の理念である、「『生きる力』を実効的に獲得するために必要」とされています。
参照・参考:第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方:文部科学省
日本でも21世紀型スキル(21世紀型能力)が、教育方針として組み込まれていることが分かりました。では、他国の取り組みはどうなっているのでしょうか?
21世紀型スキルに対する他国の取り組み
現在、新しい能力観の考え方として、21世紀型スキルだけでなく、OECD(経済協力開発機構)提唱の「キー・コンピテンシー」という考え方も登場しています。
21世紀型スキルの影響が強いのは北米で、キー・コンピテンシーの影響が強いのはヨーロッパのほうですね。アジアでは、21世紀型スキルとキー・コンピテンシーの両方の影響があります。
キー・コンピテンシーについては次章で解説しますが、世界的な流れとして、21世紀型スキルと同じく各国で教育方針が取られていますね。
21世紀型スキル関連でぜひ「知っておきたい」用語
ここまで21世紀型スキルの基本情報や理由などお伝えてきました。しかし、「批判的思考」や「キー・コンピテンシー」など、あまり聞き慣れない言葉も出てきましたね。
そこでこの章では、21世紀型スキルに関連した「知っておきたい」用語も解説しましょう。
批判的思考
「批判的思考(Critical thinking)」とは、相手の発言に耳を傾け、さまざまな角度から論理的に考え、感情も客観的に分析し理解することです。
「批判的」と聞くと、てっきり相手を攻撃したり非難したりする思考かと思いがちですが、そうではありません。相手の考えだけでなく、「自分の考え方に偏りや誤りなどがないか?」も省みます。
批判的思考は21世紀型スキルにも組み込まれているため、ぜひ知っておくといいですね。
問題解決能力
「問題解決能力」とは、問題を解決すための過程を描くことができ、実行できる能力をいいます。単に「テストなどで出される問題を解く力」ではなく、日常生活や社会で直面する問題を解決できる、実践的な能力といったところですね。
また「問題発見力(問題を発見する力)」も、問題解決能力を発揮するために大事な能力です。
ちなみに問題解決能力も、21世紀型スキルや21世紀型能力にも組み込まれています。
プログラミング教育
「プログラミング教育」とは、一般的にプログラミングに関する教育のことをいいます。現在では、文部科学省の新学習指導要領で発表されているプログラミング教育を指すことが多いですね。
例えばプログラミング教育の目的として、小学校だと「プログラミング的思考を身に付ける」があります。21世紀型スキルもそうですが、プログラミング教育も新しい教育のために、国が進めている方針の一つですね。
メタ認知
「メタ認知」とは、自分の行動や考え方などを高い視点から認知することです。
メタ認知に基づいて考えることで、「もう一人の自分」を生み出します。客観的に「自分の理解力を認知していること」につながっています。
ちなみに前述で登場した批判的思考は、まさにこのメタ認知によって成り立っている思考方法ですね。
キー・コンピテンシー
「キー・コンピテンシー(Key Competencies)」とは、21世紀型スキル同様、21世紀を担うための人材、能力観の考え方です。「OECD(経済協力開発機構)」によって提唱されました。
キー・コンピテンシーで定義されているのは以下の4つ。
- 異質な集団で交流する力
- 自律的に活動する力
- 相互作用的に道具を用いる力
- 思慮深さ(各コンピテンシーの核心)
出典:THE DEFINITION AND SELECTION OF KEY COMPETENCIES - OECD
自主性や柔軟さを感じさせる考え方は、プログラミング教育と通じるものがありますね。
他にも、知っておきたいプログラミング用語集もありますので、ぜひ参考になさってください。
21世紀型スキルをこれからどう取り組んでいくべきか?
21世紀型スキルについてさまざまな視点でお伝えしてきました。内容を踏まえたうえで、私たちはどのようにして、子どもたちの目指す21世紀型スキルに取り組んでいくべきなのでしょうか?
プログラミング教育とあわせて考えてみましょう。
21世紀型スキルとプログラミング教育を通じて、自分の頭で考えられる大人を目指そう
21世紀型スキルとプログラミング教育も、共通しているのは「自分の頭で考え、全体的な能力を高め続け、行動し続けること」といえるでしょう。
小学校でのプログラミング教育の目的は、「プログラミング的思考を育む」ことです。プログラミング的思考の定義は以下のとおり。
「プログラミング的思考」とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
出典:小学校プログラミング教育の手引(第二版)| 文部科学省
プログラミング的思考については、こちらの記事も参考になさってください。
21世紀型スキルが生まれたきっかけは、「知識を使って何ができるか?」でした。単に「知識だけ」使う仕事だけでいいのなら、仕事で必要以上に頭を動かすことも、自発的に行動するなど工夫することも少なくなりがちでしょう。
しかし、それでは自立心が育たなくなり、自分で考えて行動できない大人になってしまうのではないでしょうか?これでは貧しい人生になってしまいますね。
21世紀型スキルとプログラミング教育を通じ、子どもたちが少しでも自分の頭で考える大人になれるよう育んでいくことが大切です。
プログラミング教室やプログラミング教材からはじめてみよう
子どもたちが取り組めることとして、例えばプログラミング教室やプログラミング教材などで学ぶ方法があります。
これまでに、当サイトでもたくさんのプログラミング教室を紹介しています。ぜひ参考になさってください。
教室数1,500教室(2021年11月時点)と、日本でトップクラスの多さを誇る「ヒューマンアカデミーロボット教室」の紹介記事はこちら。
縦横ナナメとつなげられる、個性的なブロックを使う「エジソンアカデミー」の紹介記事はこちら。
口コミでも評判の高い、「LITALICOワンダー」の紹介記事はこちら。
中学生向けにプログラミングを独学する方法を解説した記事もあります。
ぜひ、できるところからはじめてみましょう!
【まとめ】21世紀型スキルを身に付けてより良く生きよう
21世紀型スキルについてお伝えしてきました。最後に、内容をまとめましょう。
21世紀型スキルのまとめ
- 21世紀型スキルとは「21世紀を生きていくために必要な新しい能力」
- 21世紀型スキルが求められるようになったのは「知識を使って何ができるか?」が問われるようになってきたから
- 文部科学省では21世紀型能力として定義され、「基礎力」「思考力」「実践力」の3層で構成されている
- 知っておきたい用語として「批判的思考」「問題解決能力」などがある
- これからの取り組み方として、プログラミング教育と一緒にプログラミング教室やプログラミング教材などからはじめてみよう
21世紀型スキルには、批判的思考や問題解決能力など、普段ではあまり聞かないような言葉も登場します。しかし「知識で何ができるのか?」を意識していけば、きっとそれらの力も身に付くでしょう。
ぜひ、21世紀型スキルを身に付けてより良く生きましょう!
【参照・参考資料】
・松尾知明(2015)『21世紀型スキルとは何か‐コンピテンシーに基づく教育改革の国際比較』明石書店
・田中義隆(2015)『21世紀型スキルと諸外国の教育実践‐求められる新しい能力育成』明石書店
・楠見孝・道田泰司(2016)『批判的思考と市民リテラシー‐教育、メディア、社会を変える21世紀型スキル』誠信書房