「アクティブラーニングって何?簡単に教えて」
「アクティブラーニングって、プログラミング教育とどう関係あるの?」
「アクティブラーニングってやたら聞くようになったけど、目的やメリットって何なの?実際にどんなふうに使われているの?」
『アクティブラーニング』とは、文部科学省で推し進めている学習方法。簡単にいえば、受け身ではなく主体的に学習する方法のことです。
小学校、中学校でプログラミング教育が必修化されたこともあり、「プログラミング」や「STEAM教育」などと並び、よく耳にする言葉になりましたね。
今回はそんなアクティブラーニングについて、以下の内容をお伝えしていきましょう。
このページでわかるアクティブラーニングのこと
- 基本情報(文部科学省での定義)
- プログラミング学習との関係
- 目的と背景
- 事例
- メリット
順番に見ていきましょう。
アクティブラーニングとは「主体的に学習、行動、解決できる人材を育む学習方法」のこと
冒頭でもお伝えしましたが、アクティブラーニングとは「主体的に学習、行動、解決できる人材を育む学習方法のこと」です。
学校の授業を思い出してほしいのですが、授業といえば、教員から生徒に向けて一方的に伝える講義式が多くありませんでしたか?
アクティブラーニングとは、生徒のインプットに重きを置いた学習だけではなく、アウトプットも重要視します。受け身ではなく能動的な学習なのですね。
また「学習」と聞くと、「正解を探す」と思われるかもしれません。アクティブラーニングでは、過程の「学ぶ姿勢」が大事だといわれています。
こんなアクティブラーニングですが、文部科学省も推し進めており、新学習指導要領にもその要素が組み込まれています。
文部科学省による新学習指導要領でも、アクティブラーニングを推し進めている
文部科学省の用語集によると、アクティブラーニングは以下のとおりに解説されています。
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である
出典:「用語集」|文部科学省
そんな文部科学省でのアクティブラーニングの扱いは、実は少しずつ変わっています。簡単にまとめました。
- 2012年の(※)中央教育審議会にて、「アクティブラーニング(アクティブ・ラーニング)」の言葉が登場(このときは大学教育の分野での登場)
- 2014年の中央教育審議会にて、初等中等教育の分野にも「アクティブラーニング」が登場
- 2017年の発表学習指導要領改訂案では、「アクティブラーニング」から、「主体的・対話的で深い学び」に表現が変更、実施
(※ 学習指導要領の実施のために必要な議会のこと。新学習指導要領実施までの流れは、「中央教育審議会での議論 → 改訂 → 実施」となっている。)
参照・参考:新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)|文部科学省
つまり、もともとアクティブラーニングとは、大学教育で登場する言葉、概念だったのですね。それを初等中等教育の分野にまで進めてきたのです。
そして現在、文部科学省では「『主体的・対話的で深い学び』を推し進めるために、『アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善』をおこなっていく」と、変化しています。
ちなみに表現が変化したのは、「なじみのない外来語だと定義が曖昧になる」と、文部科学省が判断したからですね。
「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」で述べられている3本柱
「主体的・対話的で深い学び」とは、何なのでしょうか?
現在、文部科学省発表の新学習指導要領によると、以下のとおりに述べられています。
3本柱 | 内容 | 目指す資質と能力 |
主体的な学び | 学ぶこと自体に興味関心を持ち、取り組むことで、 自己のキャリア形成につなげる |
・「知識及び技能の習得」 → 何を理解しているか、何ができるか・「思考力、判断力、表現力の育成」 → 理解していること・できることをどう使うか・「学びに向かう力、人間性等をゆっくり育てる」 → どのように社会・世界と関り、よりよい人生を送るか |
対話的な学び | 他者と意見交換をすることで、新たな考え方に気付く、自分の考え方を広める | |
深い学び | 各教科の知識を結び付けて、より深く理解、情報の精査をしたりすることで、創造などにつなげる |
参照・参考:「新しい学習指導要領の考え方」|文部科学省
参照:参考:平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)|文部科学省
ところで「主体的~」という表現は、プログラミング教育にもつながっている表現。次章では、アクティブラーニングとプログラミングの関係について触れましょう。
アクティブラーニングとプログラミング学習はちょうどいい関係
ずばり、プログラミングとアクティブラーニングは、学習するうえで「ちょうどいい関係」といえるでしょう。新学習指導要領でも、両者とも取り上げられています(アクティブラーニングは「主体的・対話的で深い学び」となっている)。
文部科学省によるプログラミング学習(プログラミング教育)の目的は、「プログラミング的思考を育む」こと。
プログラミング的思考とは、以下のとおりです。
自分のしたい活動のために、さまざまな要素や選択肢の中からみずから考えて選び取り、組み合わせてふさわしい手順を考える力
この「みずから考える」という姿勢は、まさにアクティブラーニングと同じく「能動的」「主体的」なのですね。両者を意識することで、プログラミングに対する理解がより進むといえるのです。
こちらにプログラミング学習に関する用語をまとめた記事もあるため、ぜひ参考になさってください。
プログラミング的思考の解説記事はこちらをどうぞ。
アクティブラーニングを導入しているプログラミング教室「学研テックプログラミング」を紹介した記事もあります。こちらもぜひ参考になさってください。
アクティブラーニングの目的と背景
ところでなぜ、ここ数年でアクティブラーニングが注目されるようになったのでしょうか?この章では、アクティブラーニングの目的と背景をお伝えしましょう。
社会の変化によって、求められる人材も変わってきたため
アクティブラーニングの目的はずばり、「人材育成」です。求められる人材が変わってきたのですね。ここにきて、なぜ人材育成が求められるようになったのでしょう?
よく耳にするのが、「グローバル化」「多様化」「情報化」といったキーワードによる社会の変化。現在、私たちは「Society 5.0」と呼ばれる複雑な社会で生きています。
こういった社会の変遷は「GIGAスクール構想」の記事も触れているため、こちらもご覧ください。
複雑に要素が入り乱れた社会では、均一的なビジネスが成り立たなくなりますし、通用できなくなります。
また教師が黒板で板書し、何十人もの生徒相手に授業していたのでは、個人の学力の差に対応できません。さらに、現在ではインターネットを通じて、学校で学ぶよりもすでに知識や技能を持っている子どももいます。
こういった変化からも、先生が生徒に教える一般的なスタイルでは、対応できなくなっているのですね。
この点について、文部科学省でも従来の学習について
- 「知識の暗記や解決パターンの評価に偏っている」
- 「一部のAO入試や推薦入試で学力不問と揶揄(やゆ)されている」
などの指摘があり、人材育成に力を入れることを述べています。
参照・参考:「新しい学習指導要領の考え方」|文部科学省
「プログラミング教育はなぜ必要か」について述べた記事もあるため、あわせてご覧ください。
このように人材を育てることは、より良い人生を送るため、大人として自主的に生きていくために必要なことです。さらに大きな視点で見れば、国の発展につながるのですね。
より建設的に生きるために、自主的で大人になることが求められる時代になってきたといえるでしょう。
アクティブラーニングの事例3つ
文部科学省によると、アクティブラーニングにはグループワーク・ディスカッション・ディベートなどが学習方法に含まれます。実際に教育の現場では、どんなアクティブラーニングがおこなわれているのでしょうか?
この章では小学校と中学校、高校でのアクティブラーニングの事例をお伝えします。
小学校の事例:英語で小学校生活の思い出を発表する授業
小学校の事例として、北海道の旭川市立朝日小学校では、外国語(英語)を使った授業があります。
内容は小学校生活の思い出を英語で発表するというもの。自分が使えたいことを、学んだ英語で伝えることで、思考力・判断力・表現力を育む目的があります。
さらにグループディスカッションを通じて、「自分の意見を伝えるために文章や資料を使うこと」「同じ立場や異なった立場で、他の友人たちとの比較をする」という学びもあります。
参照・参考:アクティブ・ラーニング情報 | 旭川市立朝日小学校 12月6日 旭川市立朝日小学校 6年1組 外国語「小学校生活・思い出」
中学校の事例:「走れメロス」を使った授業
中学校の事例では、同じ北海道での旭川市立中央中学校にて、小説「走れメロス」を使った授業があります。
この授業は「走れメロス」の人物像を分析していくというもの。登場人物の人物像だけでなく、さらに自分の中のヒーロー像まで考え、「人物像を表す語句」「情景描写」を身に付けます。
さらに、生徒お互い話し合うことで「お互いの持つ、ヒーロー像を認め合う」という「深い学びの姿」が目的としてあります。
参照・参考:アクティブ・ラーニング情報 | 旭川市立朝日小学校 10月10日 旭川市立中央中学校 2年1組 国語科「走れメロス」
高校の事例:数学ソフトウエアを使った授業
高校の事例では、千葉県立船橋啓明高等学校の数学ソフトウエアを使った授業があります。
この授業は「数学3」の「積分とその応用」という単元で、不定積分のランダム問題演習を、生徒同士で話し合いながら解いていくというもの。
注目すべき点は、使用した数学のソフトウエアは、パソコン上ではなくスマートフォンを用いたこと。生徒にとってなじみのあるツールを使うことは、学習意欲の向上にもなります。
この授業の後、「生徒の発言が増え、積極的に授業に取り組むようになった」「問題を『自分自身の問題』と認識できるようになってきた」という評価もあり、良い試みだったようですね。
参照・参考:アクティブラーニング, プログラミング学習で使える数学ソフトウェア (数学ソフトウェアとその効果的教育利用に関する研究):京都大学数理解析研究所 - 講究録 Kokyuroku -
アクティブラーニングのメリット
ここまで文部科学省で述べられているアクティブラーニングや、アクティブラーニングの事例などお伝えしてきましたが、肝心のメリットもお伝えしましょう。
アクティブラーニングの授業を受けた学生のほうが落第する可能性が低い
アクティブラーニングのメリットとして、「アクティブラーニングの授業を受けた学生のほうが、落第する可能性が低い」という研究結果があります。
ワシントン大学のスコット・フリーマン教授がおこなった、アクティブラーニングに関する225件の研究の分析結果をまとめました。
- 講義中心の授業と、アクティブラーニングの授業を受けた学生で落第者数の割合を比較
- 講義中心の授業を受けた学生は34%が落第
- アクティブラーニング中心の学生は22%が落第
- 講義中心の授業を受けた学生のほうが、アクティブラーニングの授業を受けた生徒よりも落第率が55%高かった
参照・参考:Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics | PNAS
アクティブラーニングの効果が、よくお分かりいただけたのではないでしょうか?
学習定着率が他の学習方法と比べて高い
もう一つ、アクティブラーニングのメリットとして、「学習定借率が他の学習方法と比べて高い」説があります。説によると、「人に教える」「みずから体験する」「グループ討論」は、学習定着率が高いというもの。
ただこちらの説はあやふやな部分があり、データの数字に疑問の声もあるため、明言が難しいです。
しかし「人に教える」「みずから体験する」「グループ討論」は、インプットだけでなくアウトプットも多くこなす学習方法。体験したことのある方なら分かると思いますが、インプットした内容は自分の頭の中に留めておくだけだと定着しづらく、すぐに忘れていきませんか?
対して、誰かに教えるなどのアウトプットを多くこなすことで、自分自身も知識の再確認ができます。
人に教えたり、みずから体験したりする行為は、まさにアクティブ(能動的)です。「アウトプットによって学習定着率が違う」というのは、あながち間違っていないといえるでしょう。
【まとめ】アクティブラーニングで主体的に学ぼう
最後に、お伝えしてきた内容をまとめましょう。
- アクティブラーニングとは「主体的に学習、行動、解決できる人材を育む学習方法」のこと
- 文部科学省の新学習指導要領では、「『主体的・対話的で深い学び』を推し進めるために、『アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善』をおこなっていく」となっている
- アクティブラーニングの目的と背景は「社会の変化によって、求められる人材も変わってきたため」
- アクティブラーニングの事例として、「英語を使って発表する」などがある
- アクティブラーニングのメリットとして「学習定着率の高さ」などがある
アクティブラーニングに限った話ではありませんが、みずから学ぶことは自分の人生を切り開くことです。
自分の力で人生を渡っていけるよう、アクティブラーニングで主体的に学びましょう!