「STEAM教育って何?よく耳にするようになったけど…」
「STEAM教育ってそもそもなんで必要なの?国ではどんなふうに言っているの?」
「STEAM教育の日本と海外の事例や、取り入れている教材があれば教えてほしい」
ここ数年でよく耳にするようになった『STEAM教育』。
STEAM教育とは、5つの教科を横断して学ぶ教育手法のこと。人材不足への対応からアメリカで発祥しました。
日本でも、2020年には小学校、2021年には中学校でプログラミング教育がはじまったことを受け、STEAM教育にも注目が集まっています。
今回はそんなSTEAM教育について、以下の内容をお伝えしていきましょう。
このページでわかるSTEAM教育のこと
- 「STEAM教育」の意味
- STEAM教育はなぜ必要?
- STEAM教育の事例(海外・日本)
- STEAM教育を取り入れている教材とプログラミング教室
それでは順番に見ていきましょう。
「STEAM教育」の意味
まず「STEAM教育」とはそもそも何か、お伝えしていきましょう。
STEAM教育とは5つの教科を横断して学ぶ教育手法
STEAM教育とは、冒頭でもお伝えしたように「5つの教科を横断して学ぶ教育手法」のことです。学んだ内容を「実社会において課題発見、解決を目指す」という意図があります。
以下5つの教科の頭文字を由来として、STEAM教育の言葉は作られました。
- 「Science(科学)」
- 「Technology(技術)」
- 「Engineering(工学)」
- 「Art(芸術・リベラルアーツ)」
- 「Mathematics(数学)」
もともとSTEAM教育は「STEM教育」からはじまり、後から「Art(芸術)」が加わりました。Artが加わったことにより、芸術だけではなく創造や表現、(※1)リベラルアーツといった広がりも意味するようになりました。
ちなみに興味深いことに、「知能は少し低いものの、創造性が高い子どものほうが学校の成績がいい」という研究結果があります。創造力には、知能に広がりを持たせ、カバーしてくれる力があるのですね。
参考:子供の学力向上に「芸術鑑賞が効く」意外な理由 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
(※1)リベラルアーツって何だ?
リベラルアーツの解説はたくさんありますが、一例として以下の意味があります。
人間を良い意味で束縛から解放するための知識や、生きるための力を身につけるための手法を指します。
STEAM教育の発祥はアメリカ
STEAM教育の発祥はアメリカといわれています。
厳密にいうと、STEAM教育になる前の「STEM教育」は、2000年代にアメリカで生まれました。アメリカではオバマ大統領の政権時に、科学技術に強い人材を生み出す「STEM教育」を国家戦略で掲げた経緯があります。
その後、Artが加わり進化、STEAM教育になったのは、前述でお伝えしたとおりですね。
アメリカがSTEM教育(STEAM教育)を取り入れたのには、STEM教育関連の業種、例えばソフトウエア開発や医療科学関連など人材不足への対応があります。
こういった経緯から「STEAM教育先進国として、アメリカでどんな事例があるのか知っておくべき」という意見があります。
参考:H28年度_国際学術交流研修海外実務研修報告集.indd| JSPS海外学術動向ポータルサイト
日本も似た背景として、IT関連の人材不足が懸念されていますね。そのため、現在国をあげてプログラミング教育に力を入れています。分かりやすいのが、2020年度から小学校で、2021年度から中学校でのプログラミング教育必修化があります。
どうしてプログラミング教育が必要なのか、理由やメリットデメリットを解説した記事はこちら。
小学校でのプログラミング教育必修化に関して解説した記事も、ぜひ参考になさってください。
STEAM教育はなぜ必要?文部科学省で述べていること・プログラミングとの関係性を解説
ここまでSTEAM教育の意味や発祥をお伝えしてきました。
この章では「そもそもSTEAM教育はなぜ必要なの?」という疑問に対し、プログラミングとの関係性とを交えてお伝えしていきましょう。
文部科学省によると「実社会の課題解決力を身に付けるため」
前述にて、STEAM教育には「実社会において課題発見、解決を目指す」という意図があるとお伝えしました。
文部科学省でも、STEAM教育について以下のように述べています。
各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育であるSTEAM教育を推進
文部科学省では他にも、「STEAM教育人材を生み出す」「STEAM教育の推進」と述べており、STEAM教育を積極的に進めています。
例えば、「その分野1つだけ、あるいは1教科のことしか知識がない、教養がない」子どもがいたとしましょう。その子どもは、今の社会に出たとき課題解決に挑めると思いますか?かなり難しい状況が想像できるでしょう。
現代において、知識も価値観も1つだけではありません。さまざまな選択が必要ですし、分析、課題解決、行動が必要です。
このようにSTEAM教育は、従来の文系、理系のような枠組みを越え、学びと課題解決への姿勢を学ぶ教育手法といえるでしょう。
STEAM教育の本質は「自立した姿勢」と「楽しむ心」
STEAM教育が注目されるようになった背景には、人材不足への対応があるとお伝えしました。ただSTEAM教育の本質として知っていただきたいのが、「自立した姿勢」と「楽しむ心」です。
国際数学オリンピック金メダリスト、中島さち子さんはSTEAM教育の本質について以下のように述べています。
- 実社会は教科書や模範解答のような「必ず正解のある課題」が出てくるわけではなく、みずから問いかけて解決していくもの
- ワクワク感を持って取り組んで学んでいくこと
参考:国際数学オリンピック金メダリスト中島さち子氏が語る「STEAM教育の本質」 | 東洋経済education×ICT | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
中島さんの述べたSTEAM教育の本質は、文部科学省の「各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくため」につながっているといえるでしょう。
人生には、子どもだけでなく大人でも逃げ出したくなる問題が出てきます。大変な状況であっても、自立した大人の姿勢と、子どものようにワクワクする心が大切ということですね。
STEAM教育のことを考えると、プログラミング的思考を身に付けることは大事
STEAM教育を語るときに大事なのが、プログラミングで登場する「プログラミング的思考」です。
以前、プログラミング的思考についてまとめた記事で、プログラミング的思考とは「さまざまな要素、選択肢の中から考えて選び取り、ふさわしい手順を考える力」と述べました。
これはSTEAM教育の「実社会の課題解決力を身に付けるため」を考えたときに、必要な力といえるでしょう。なぜなら他人任せでなく、みずから考えて答えを導きだそうとする姿勢だからです。
他人任せというのは確かに楽ですが、実は充実している人生とはいえないのですね。
このように考えると、STEAM教育とプログラミング的思考とは、最終的に幸せで充実した子を育てるための教育といえるでしょう。
小学校のプログラミング教育に関する記事はこちら。
STEAM教育の事例(海外・日本)
ここまでSTEAM教育の概要をお伝えしてきましたが、日本のSTEAM教育にはどのような事例があるのでしょう?
この章では、日本と一緒に海外のSTEAM教育の事例もお伝えしましょう。
【海外(アメリカ・インド・中国)の事例】NASAや国の政策による取り組み
海外(アメリカ・インド・中国)のSTEAM教育の事例をまとめました。
- アメリカ:NASA(アメリカ航空宇宙局)による、プログラミングや3Dプリンターのワークショップ、天体の画像集などの分析が可能なプログラム
- アメリカ:コロンビア大学などの主催による、電子部品や3Dプリンターで作成した部品などでオリジナルロボットを作る催し
- インド:政府の政策として、3Dプリンターやセンサーなどのキット、ミーティングルームの設備などアイディアを実現できる「Atal Tinkering Laboratory(ATL)」という場所の設置
- 中国:政府による「大衆創業・万衆創新」という政策により、ものづくりや情報交換を目的としたスペースの設置
代表的な大国からSTEAM教育の事例を見ると、やはり国をあげた政策などが大きく関わっていますね。今の時代、どの国もSTEAM教育に力を入れていることが分かります。
【日本の事例】経済産業省の取り組みによる「未来の教室」
日本のSTEAM教育では、「未来の教室」という取り組みがあります。
「未来の教室」とは、経済産業省の設置した有識者の集まりで、教育のための実証事業、もしくは学びを目的とした場。「未来の教室」の目指す姿として、一つに「学びのSTEAM化」があります。
「未来の教室」の実証事業例では、「エシカルハッカー発掘・育成プログラム」という授業があります。明蓬館高等学校と鹿島朝日高等学校の2つの通信高校でおこなわれました。
この授業を通じて分かったのが「情報セキュリティ人材の即戦力になれる生徒たちが3分の1ほどいた」ということです。とても興味深い結果ではないでしょうか?
この生徒たちが可能性を伸ばして他分野も積極的に学んでいけば、まさにSTEAM教育の「横断して学ぶ」を実現できることになります。
「未来の教室」によって、子どもたちのどんな可能性が見いだせるのか、今後の展開に期待したいですね。
参考:経産省が「教育現場のDX」に超本気の納得理由 | 東洋経済education×ICT | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
未来の教室の公式サイトはこちら。
STEAM教育を取り入れている教材2選・プログラミング教室2選紹介
この章では、STEAM教育を取り入れている教材2選・プログラミング教室2選を紹介しましょう。
レゴ社でおなじみ「レゴ(R)エデュケーション BricQモーション」
はじめに紹介するのはレゴ社の教材、「レゴ(R)エデュケーション BricQモーション」。スキーや体操、自転車レース、綱渡りなどのスポーツをテーマにSTEAM学習できます。
この教材では、力や運動、相互作用といった理科・物理の基本原理を学べます。例えば綱渡りだと「作用・反作用の法則」が学べますね。
「レゴ社製のブロックが好き」「ブロック遊びが好き」という子どもに、ぜひおすすめです。
レゴ(R)エデュケーション BricQモーションの公式サイトはこちら。
月イチでパズルやアプリが楽しめる「WonderBox(ワンダーボックス)」
画像出典:WonderBox(ワンダーボックス)|公式サイト
次に紹介するのは、月イチでパズルやアプリが楽しめる通信教育サービスの「WonderBox(ワンダーボックス)」です。ワンダーラボ株式会社が、STEAM教育領域を横断する教材として発表しました。
WonderBoxでは、パズルやワークブックなどを、専用アプリと組み合わせて学べます。種類も豊富でコンテンツは10以上。
「いつも同じ教材だと飽きるかも」「いろんな教材を使ってみたい」という子どもに、ぜひおすすめです。
コースが豊富で評判も良し!「LITALICOワンダー」
画像出典:子ども・小学生のプログラミング教室・ロボット教室 | LITALICOワンダー
コースが豊富で評判もいいのがプログラミング教室の「LITALICOワンダー」です。
LITALICOワンダーの特徴として、教材にプログラミング・ロボット・3Dプリンターなどを使用し、「IT×ものづくり」をテーマにしていること。楽しいものづくりを学べます。メルマガではさらに、STEAM教育に関する情報発信をしているとのこと。
当サイトでも何度か登場しているLITALICOワンダーですが、昨今の情勢から通学だけでなくオンライン対応もはじめました。地方在住者でも授業を受けられるようになっています。
LITALICOワンダーの公式サイトはこちら。
子ども・小学生のプログラミング教室・ロボット教室 | LITALICOワンダー
LITALICOワンダーの紹介記事はこちら。
アーテックの幼児向けSTEAM教室「First STEAM」
画像出典:4歳からの体験型STEAM教室 | First STEAM
2つ目のプログラミング教室は、アーテック社運営の幼児向けSTEAM教室「First STEAM」です。
First STEAMは4つのコースからできており、それぞれ横断する形で学べます。コースはお絵描き・ブロック・ロボットプログラミング・磁石などを使ったサイエンス工作などがありますね。
First STEAMの特徴は、子どものワクワクや自己肯定感を奪わないカリキュラム作りをしていること。卒業後は、そのままアーテック社系列のプログラミング教室を受講するのもいいでしょう。
「子どもがまだ幼児だけど教室に通わせてあげたい」「いろんなことを体験させたい」という方におすすめですね。
First STEAMの公式サイトはこちら。
First STEAMの紹介記事はこちら。
【まとめ】これからSTEAM教育はとても大事!プログラミング学習などで時代に強い子どもになろう
STEAM教育についてお伝えしてきました。最後に、お伝えしてきた内容をまとめましょう。
- STEAM教育とは「5つの教科を横断して学ぶ教育手法」のこと
- STEAM教育の発祥はアメリカ
- STEAM教育は実社会の課題解決力を身に付けるために必要
- STEAM教育のことを考えると、プログラミング的思考を身に付けることは大事
- STEAM教育の事例として、海外ではNASAや国の政策による取り組みがある
- 日本では経済産業省の取り組みによる「未来の教室」がある
- STEAM教育を取り入れている教材として「レゴ(R)エデュケーション BricQモーション」、プログラミング教室として「LITALICOワンダー」などがある
これからの時代、STEAM教育はとても大事です。プログラミング学習などで時代に強い子どもになれるよう、導いていきましょう。